「欧州危機」の検証
2008年のリーマン・ショック以降、「お金をばらまけば景気が上向く」という、
(意味を曲解した)ケインズ主義が横行した。
目的はとりあえずお金をばらまくことであり、
長期的な雇用や需要の創出は念頭になかった。
ばらまきが目的だから必然的に財政赤字になる。
しかし景気は思うようには回復せず、財政赤字だけが膨らんで、
当然ながら財政危機に陥る。
そうなると景気はそっちのけで、赤字削減だけに関心が持たれる。
赤字削減には歳出の削減と歳入拡大の二つしか方法がない。
経済が拡大しなければ所得も消費も増えず、税収の必然増も望めず、
歳入拡大のためには増税しかない。
ところが「増税は景気冷やす」と信じられているから、増税はできない。
そのため大幅な支出削減が行われ、雇用を支えていた公共事業や公務員が削減される。
最終的には雇用が減るから生活不安で必然的に消費を減らす。
景気が冷えて歳入が減るから財政は更に悪化する。
かくして堂々巡りの不況の袋小路に入り込んでいく。
最大のポイントはお金をばらまけば景気を支えられると信じたことによる。
欧州のギリシャ、イタリア等は全てこのパターンである。
現在の欧州は、国家の債務危機(ソブリンリスク)と金融危機が絡んで、
更に厄介なものになっている。
まず第一に、先進国から新興国への歴史的なパワーシフトの中で起きている。
最近特に強調される「西洋の没落」が現実味を帯びている。
古代ギリシャ、ローマ帝国という欧州文明の源流が危機の震源になったのも象徴的である。
第二に、肥大化したマネー資本主義が危機を増幅・加速している。
超金融緩和の元で、マネー経済は実体経済を大きく上回って膨らんだ。
世界のヘッジファンドの雄ジョージ・ソロスをして「大量破壊兵器」と呼ばしめた
CDS(クレジット・デフォルト・スワツプ)は、
破綻リスクを避けるという本来の機能を逸脱し、投機商品化した。
第三に、市場と国家との時間差が広がっている。
短期勝負をかける市場に対して、時間をかけて手続きを踏むのが民主主義である。
特にユーロ圏の運営は加盟17ヶ国の民主主義の合意に基づく。
時間差はますます広がる。
そして「ユーロ崩壊」とする自己充足的予言の大合唱が、
危機を実態以上に深刻化させている。
問題解決に向けた道は二つ。
ひとつはギリシャ、イタリア等の問題のある国をユーロ圏から切り離す。
もうひとつは独仏の継続的な援助と労働者の全面受け入れである。
そして英国も大きなカギを握る。
メルケル英首相は「ユーロに加盟していなくてよかった」とほくそ笑む。
また国際通貨基金(IMF)融資にも非協力的である。
今は亡きチャーチルは「欧州合衆国」の演説で、
「欧州という家族を再建するには独仏協調である」
「楽観主義者は困難の中に好機を見出す」
と強調した。
歴史的な危機の中で、欧州の結束が必要な時である。
