読売巨人軍の内紛に見る日本の企業統治
1960年~70年代、「巨人、大鵬、卵焼き」というキャッチコピーが流行った。
日本国民の誰もが(その三つを)好きという意味だった。
ご多分に漏れず、自分は巨人軍のファンであり、主砲・長嶋茂雄に憧れた。
その背番号3を、例えば風呂屋や学校の下駄箱の番号に競って追及した。
巨人軍は、
(富山県出身の)読売新聞の初代社長・故正力松太郎が創設したプロ球団である。
毎日、朝日新聞が中等・高校野球をバックに購買部数を伸ばしたのと同様の論理で、
読売はプロ野球を推進していった。
読売巨人軍は、プロ野球の盟主として君臨するに至るための、
いわば“(読売の)広告塔”の役割だった。
今回の内紛は、巨人軍コーチ人事を巡り、
清武英利・球団代表兼ゼネラルマネジャー(GM)が、渡辺恒雄球団会長を批判し、
解任された“(単なる読売内部の)ゴタゴタ”である。
清武氏は、解任はコンプライアンス(法令順守)違反を隠蔽するための報復措置で
あるとして、訴訟を提起する構えである。
元々ゼネラルマネジャー(GM)とは、
米大リーグで使われ始めたポジション(人事的地位)である。
その基本的な役目としては、選手・コーチ・監督の人事権ならびに
関連予算の編成・執行権を行使することにある。
GMが一度決めた人事を、オーナーが“鶴の一声”でひっくり返すことはあり得ない。
一方、チームの敗退の責任はGMがとることになる。
今回の騒動の中で、清武氏は自らの責任について一度も語っていない。
清武氏はコンプライアンス(法令順守)違反云々を言う前に、
GM制度の本質を理解していなかったことになる。
ただ清武氏は犠牲者と言えなくもない。
日本の球界は素人に球団の編成やGMを任せている。
親会社から球団に来て実権を握り、マスコミに囲まれる。
そうするうちに自分を野球の玄人と思い込むようになり、
まるで監督かオーナーになったような気になる。
まして読売巨人軍は(往時のような絶対的なものではないにしろ)
依然として人気球団であり、露出度も高く、ごくごく自然に増長してしまう環境にある。
そうならないための(人間として)冷静に対処する努力は並大抵ではない。
今回の騒動が単なる“内ゲバ”かと言えば、それだけの話ではない。
日本のプロ野球の根幹に関わる問題をはらんでいる。
今回の泥仕合で曝け出されたのは、
株式会社読売巨人軍のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の未熟さである。
結局、読売グループにとっては、清武氏のGM就任は“人事異動”の一環だった。
だから「GMの権限と責任」も、そして「契約年数」も明確にしていなかった。
一連の取決めがあれば、(少々残酷な言い方だが)
GMの仕事振りが気にいらなければオーナーはクビをきればよかった。
クビを切らないなら任せる。
単純な解決ができたはずである。
日本の伝統的な“鶴の一声”が効く世界も、そろそろ限界のようである。
