サイバー戦略を検証する
2001年2月に「インターネット犯罪者」という翻訳本を刊行している。
IT用語のオンパレードで、専門の英和辞典を片手に、汗みどろの翻訳作業をしながら、
実際にこんなことがあり得るのかと、実は半信半疑だった。
ところが10年を経過して、実際にサイバー攻撃が現実のものになっている。
国や企業の秘密を盗み、核関連施設等の安全を脅かすサイバー攻撃。
米国防省は7月、「サイバー戦略」を発表、
サイバー空間を陸・海・空・宇宙並ぶ新たな「作戦領域」と位置付け、
サイバー攻撃対して通常兵力などで対抗する可能性を示している。
「キーボード対巡航ミサイルの戦いもあり得る」としたのである。
9月中旬に発覚した三菱重工業へのサイバー攻撃の輪郭が見え始めている。
3種類の異なるハッキング技術が使われ、大手IT(情報技術)企業の上級技術者と
同等の力量を持つ複数のハッカーと、それを束ねる指揮官が、
かなりの時間をかけて仕掛けた組織的な犯行と結論付けられている。
攻撃は従業員の知り合いを装うメールに添付されたコンピュータウイルスから始まり、
会社の組織図や社員のメールアドレス、交友関係などの情報を集めた人物がいた
ことになる。
ウイルスを外部から操るには、隠れた場所でサーバーを運営する技術も必要に
なってくる。まさに「プロの集団」である。
警視庁公安部は
「サイバーインテリジェンス(サイバー空間を通じて国の治安や外交を揺るがすスパイ活動)
の被害が表面化した国内初の事例」
と位置付け、今回の攻撃を「国家への脅威」と認定している。
巷間では、敵が見えず、実際の被害が想定できないことが危機感を募らせており、
サイバー攻撃は近い将来警察の主戦場になるとし、
今回の事件でどこまで攻撃者に迫り、捜査能力の高さを示せるかの、
大きな試金石となるとの見方をしている。
また最近、金融機関のネットバンキングの利用者が契約者番号やパスワードを
抜き取られ、預金を別の口座に送金されて奪われる被害が、今年の4月以降全国で
103件に上っていることも注目されている。
これまでは、電子メールなどで偽のホームページに誘導し、
入力させたパスワードを不正に入手する「フィッシング」と呼ばれる手口が主流だったが、
今年になって、ウイルスを使った手口が発覚している。
かくして、金融・電力などのインフラをコンピュータ攻撃でかく乱して経済活動を
停滞させ、現実空間でも攻撃を起こすといった、複数の手段を併用し、
同時多発的なテロを起こされたら現在の日本はひとたまりもない。
考えてみれば、ややこしい時代になったものである。
いずれにしても大震災と原発事故に直面した日本の危機管理は、
サイバー攻撃でも試されることになる。
いつものワンパターン、「全くの想定外だった」では許されない。
