日本の商品先物業界の夜明け
これまで刊行した種々の自著の中で、
「日本人の根幹には『相場は悪』の概念」があると繰り返して述べてきた。
そして古来、日本人の言う「相場は悪」の中心となってきたのが、
米相場を原点とする「商品先物相場」だった。
確かに情報の少ない時代には、「思惑」と「詭弁」の中で相場を捉えざるを得なかった。
相場が動く「市場」と、「(ひとやま当てようと)相場をする者」の仲介をしたのが、
現在は商品取引員と呼ばれる商品先物専門業者(=ブローカー)だった。
手数料第一主義の商品先物業界の中で、商品先物という金融商品を扱う営業マンは、
独自の情報分析能力やテクニカル分析能力もないまま、またそうした能力を必要と
されないまま、結果的に相場の方向付けが正しいかどうかを考えることもなく、
経営者側からの指令で(強引な)セールスをせざるを得なかった。
結果的に営業マンは、顧客が利益を上げれば他の相場に勧誘し、
損失が出れば追加証拠金(追い証)を顧客に誅求する作業に追われた。
取扱手数料の目標値を達成せんがためには、顧客に損失をさせる作戦も頻繁に採られた。
一方で、証券業界もほぼ同じような状態ではあった。
ただ株式相場は、日本ではなぜか「相場ではなく将来的な投資」という言い方をされ、
是認されていた。
実態は同じであったにもかかわらず、商品相場だけが「相場は悪」の代表として
位置付けられていた。
それが20世紀までの(日本の)商品先物業界の実態だった。
ところが、20世紀後半から始まった金融工学(フィナンシャル・エンジニアリング)と
ITの進捗で、まず外国為替取引(外為取引)が主婦層を中心に一般的となっていった。
外為取引が日本の個人投資家に定着するにつれ、概念的に外国為替取引と商品先物取引
との間に、何等ギャップがないことに気付き始めた。
外国為替と商品先物は同列に位置する金融商品であり、そして現在の世界経済には
不可欠なヘッジ機能を持つものだと、ようやくにして理解され始めたのである。
平行して、(世界の趨勢に沿って)取扱手数料の段階的なダンピングが行われ始めた。
そうした複合要因が相俟って、先物業者の営業マンが、無理矢理な強引なセールスを
するだけの“果実”が得られなくなっていった。
結果として、関連業者の統廃合が急速に進んでいった。
現在は、日本政府の総合取引所構想に沿った、証券取引所の商品EFT(上場投資信託)
の上場ラッシュの中で、商品先物と証券・金融の市場統合の流れにいる。
特に三菱UFJ信託銀行が管理する「金の果実」シリーズが好調で、
日本の商社の雄・三菱商事も介在することで、
従来のような商品先物に対する“暗いイメージ”が払拭され始めている。
『「相場は悪」or「商品先物は悪」の概念は近い将来払拭される』と述べ、
最初は“異端児”扱いされた。その論調を頑固にし続けて約15年。
日本の商品先物業界が変わろうとしている。
そして、ようやくにして商品先物が認知され始めた。
「(NHK・大河ドラマ・龍馬伝のセリフのように)日本の(商品先物の)夜明けぜよ」
と思う。誠に感慨深い限りである。
