無策ニッポン、恒例・円高の夏
ここ10年、1㌦=100円以下の動きが続き、
1973年から始まった自由変動相場制の中で、20世紀中に日本で醸成されてきた、
「(日本的言い方の)円高の概念」が曖昧になってはいる。
ただ「8月の円高」、もう少し専門的に言えば「8月の円高・ドル安の流れ」が
恒例になっている。
8月1ヶ月の動きをみると、円高に振れたのが過去30年で19回、過去20年では15回、
この10年に限定すれば8回。
要は21世紀に入って以降、「8月になれば円高になる」というのが定説になり始めている。
大きな要因として説明されてきたのが以下の2点。
「8月は米国債の償還額が多く、国内の機関投資家が償還・利払いで得たドルを、
円に換えて還流させ易い土壌にある」
「市場の主役である海外勢が長期の夏休みに入り、日本でもお盆休みが絡むことから、
市場全体が手薄になり、少しのインパクトで市場が動き易い」。
一方で、市場の波乱要因が8月に起きることが多かったのも事実である。
古くは71年のニクソンショック。
97年にはアジア通貨危機が深刻化。
98年にはロシア金融危機が起きている。
近くでは2007年8月、米住宅ローン問題(=サブプライム問題)が深刻化している。
1㌦=85円という数字に慣れてしまい、
ごくごく自然に80円割れの可能性が出ている現状において、
「円高・他国通貨安」という意味を考えてみたい。
ここにきて米国および欧州の金融緩和策が目立っている。
その狙いは、論理的には「デフレ防止」と「金融不安封じ込め」である。
しかし根底にあるのは「自国通貨安による外需の拡大」と見て間違いない。
例えば米・オバマ政権。目指すのは、個人消費から外需と設備投資に軸足を移す
「ニューミックス(新しい組み合わせ)」。
5年間の輸出倍増計画はその象徴だが、「金融緩和+ドル安」はニューミックス達成の
政策手段である。
ではなぜ日本が狙われ、円高になる(=日本が買われる)のか。
いまや日本の政界は、派閥間の主導権争い、総裁(代表)下ろしから始まり、
挙句の果ての離党、除名、新党結成など、“何でもあり”の権力争いが延々と続けられている。
そして日本国民は、半ばあきれながらもその争いを楽しんでいる。
日本経済、引いては経済を率先して先導すべき政府当局や、
国民すらも末期的症状を呈している。
海外の論調は強烈である。
「金融政策に根幹の考え方がない」
「参院選で与野党逆転したが、9月の民主党代表選もあり、新たな政策が出る可能性は皆無」
「先進国で最大の巨額の財政赤字を抱えているが、ここ3年でパンクする可能性は少ない」
本来なら政策不在は「売り」材料。
米欧が動き始めても、(良く言えば)泰然自若・動かざる日本、
(有体に客観的に言えば)米欧に追随できない日本(=日本円)は、
ある種の“安全パイ”には違いない。
ただこうした無策の日本政府に対し、ニッポンの大企業は「もう日本国政府には頼まない」
とばかり、生産や設備投資の海外シフトを加速させている。
表面的には困る困る!と連呼しつつも、超円高どころか、メガ円高、実は大歓迎!
といったところが本音であろう。
80円割れ近し。
と言うと、大概の方々が「エエッツ!」と驚かれるが、
現状から5円ばかりの円高・ドル安になればいいだけの話。
その表面的な数字に驚くだけだけでなく、その意味を少し丁寧に、
かつ正確に理解したいものである。
